肛門内科
いぼ痔・切れ痔・痔ろうなどの痔をはじめとした肛門の疾患や症状を専門的に診る診療科です。痔は良性疾患ですが、進行してしまうと大変な治療が必要になり、臭いや液体も漏らさないという肛門の高度な機能がダメージを受けて、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく下げてしまうことがあります。
痔は早期発見と適切な治療で治しやすい疾患であり、現在はある程度進行していても以前に比べてかなり楽な治療で治せるようになってきています。また、痔は再発を繰り返して悪化しやすい傾向がありますので、当院では再発防止を視野に入れた治療を行っています。
当院ではスタッフ全員が患者様のプライバシーを大事にしており、きめ細かく配慮し、丁寧な検査や治療を行っていますので安心してご相談ください。
女性医師による肛門科診療
当院では、毎月第4土曜日の午前中に女性医師による肛門科診療を行っております。肛門科を受診するのは抵抗があるという女性の方でも、受診しやすい環境をご用意しております。予約制になりますので、事前の予約のうえ、ご来院ください。
痔の種類
痔は、肛門内外に出っ張りができるいぼ痔(痔核)、肛門の皮膚が切れる切れ痔(裂肛)、肛門の内側から組織を通ってトンネル状の穴が皮膚までつながってしまう痔ろう(穴痔)に分けられます。いぼ痔はさらに、肛門内に出っ張りができる内痔核、外にできる外痔核に分けられ、主な症状や治療法が大きく異なります。
痔は放置してしまうと重症化しやすく、しっかり治さないと再発を繰り返すことの多い疾患です。大事な肛門機能に障害を残さないためにも、出血、痛み、ふくらみなど、痔を疑う症状に気付いたら早めの受診をお勧めしています。
肛門周辺の構造
肛門の内側に歯状線という部分があり、そこを境に表は皮膚、中は直腸粘膜になっています。外痔核は知覚神経のある皮膚部分にできますので痛みを強く感じ、内痔核は粘膜にできますので痛みを感じることはほとんどありません。歯状線には肛門陰窩という小さな外向きのくぼみがあり、その中には肛門腺の出口があって、ここに細菌感染が起きて肛門周囲膿瘍を発症し、進行すると痔ろうになります
肛門の機能になる重要な締め付けは肛門括約筋が担っていますが、臭いも漏らさない高度な密閉は肛門周囲の組織に豊富に存在する毛細血管の静脈叢がクッションとしての役割を果たすことで実現しています。痔が悪化すると肛門括約筋や静脈叢が大きなダメージを受け、肛門の機能を果たせなくなる可能性がありますので、早めに治療を受けてしっかり治し、再発を防ぐことが重要です。
いぼ痔
排便時の習慣的な強いいきみ、冷え、同じ姿勢を長時間続けるなど、肛門への負担が大きくなると肛門周辺の血流が悪化します、血流悪化によって肛門周囲の静脈叢がうっ血して腫れ、痔核というふくらみができた状態がいぼ痔です。歯状線の内側にふくらみがある内痔核と、外側にある外痔核は、主な症状や治療法が大きく異なります。外痔核は触れればすぐわかり、知覚神経のある皮膚にできますので強い痛みを感じやすくなっています。内痔核はほとんど痛みを起こさないので出血や肛門から痔核が脱出してはじめて気付くことが多くなっています。
内痔核
肛門の内側にできて痛みをほとんど起こさず、早期には残便感程度の症状しかないので、進行して出血や痔核の脱出を起こすようになってはじめて気付くケースが大半を占めます。ある程度進行してしまった場合、以前は入院が必要な手術でしか治せなかったのですが、現在では侵襲の少ない治療で完治が期待できることが増えてきています。痔核の脱出は排便時に起こり、最初は自然に中へ戻りますが、進行すると押し込まないと戻らなくなり、最終的には押しても痔核を肛門内に戻せなくなります。
外痔核
肛門の皮膚部分にふくらみである痔核ができますので、触れただけで存在に気付きます。強い痛みを起こすことが多く、出血はほとんど起こりません。外痔核は保存的療法で治すことができる場合が多く、手術が必要になることは少なくなっています。なお、重いものを持ち上げるなど肛門に大きな負荷がかかった際に急激にふくらみができる血栓性外痔核は血栓による血豆のようなものであり、外痔核とは異なります。
切れ痔
便秘の硬く太い便が出る際に肛門の皮膚が裂けたり切れたりして生じる場合がほとんどを占めますが、勢いの激しい下痢で生じるケースもあります。排便時に強い痛みがあり、出血はほとんどの場合少量です。早期には保存的療法で治しやすいのですが、慢性的な便秘があると再発を繰り返して傷が潰瘍化・瘢痕化・線維化を起こして肛門が狭窄し、さらに切れやすくなって悪化し、肛門機能にダメージを及ぼす可能性があります。早期には排便時の痛みが短時間で解消しますが、進行すると徐々に痛みの持続時間が長くなっていきます。楽に、きれいに治すために、疑わしい症状がある場合には早めにご相談ください。なお、当院では便秘の解消も含めた治療を行うことで再発防止につなげています。
痔ろう
直腸と皮膚の境目にある歯状線の肛門陰窩に便が入り込んで細菌感染を起こす肛門周囲膿瘍が進行して痔ろうを発症します。肛門周囲膿瘍では、感染による炎症で化膿を起こし、膿が肛門周囲の組織にトンネル状の「ろう管」をつくりながら移動します。このろう管が肛門周囲の皮膚までつながってしまった状態が痔ろうです。肛門周囲膿瘍で膿が進んでいく間は痛み、熱感、高熱、腫れなどの症状を起こしますが、皮膚に穴が開いて痔ろうになるとそこから膿が排出されて痛みなどの症状はおさまります。
痔ろうのろう管は、肛門陰窩から皮膚までトンネル状につながってしまっており、自然に塞がることがなくそのまま残ってしまいます。放置しているとろう管内で再感染を繰り返し、ろう管が周囲の組織に複雑に枝分かれして広がってしまう可能性があり、そうなってしまうと肛門機能に大きなダメージを及ぼし、便失禁など深刻な症状につながることもあります。痔ろうは保存的療法では治せず、治療には手術が必要です。早期の痔ろうであれば比較的楽な手術で治せるケースが多いので、疑わしい症状がある場合にはできるだけ早く肛門内科を受診してください。なお、痔ろうを放置しているとまれですががんを発症することがあります。
肛門内科の診察の流れ
STEP1受付
受付に保険証を提出し、お薬手帳をお持ちの場合は、それも提出してください。
なお、当院では受付で受診する診療科・診療内容・疾患名・症状などについてお尋ねすることはありませんので、ご安心ください。また、当院では内科や消化器内科などの幅広い診療を行っていますので、肛門科のみのクリニックに比べると気軽に受診していただけます。
STEP2問診票の記入
当院ではWEB問診が可能です。事前にWEB問診にご記入いただいた場合、ご案内などがスムーズになります。
受付で問診票を受け取ってご記入いただくことも可能です。質問がある場合や、お手伝いが必要な場合には気軽に受付スタッフにお声がけください。
STEP3診察
診察室で医師が問診と診療を行います。
診察台に壁を向いて横になり、膝を軽く曲げ、お尻が出る程度まで下着を下げていただいたら診察準備完了です。脱衣は必要ありません。看護師が腰に大きなタオルをかけ、医師が必要な分だけタオルを上げて診察・検査します。検査の際には、医療用ゼリーをたっぷり使うことで痛みや不快感を最小限にしています。
STEP4説明
状態や結果をわかりやすくご説明し、治療についても詳しくお伝えします。患者様と相談しながら治療方針を決め、それに沿って治療を行います。診療時に気になること、不安や心配、特にお悩みの症状などがありましたら、些細なことでも気兼ねなく医師にお伝えください。
痔の再発予防
切れ痔は便秘を原因として発症・進行・再発しますが、いぼ痔も肛門にかかる過度ないきみや冷え、同じ姿勢を長時間続ける、力仕事などの生活習慣によって発症・進行・再発します。また、痔ろうは下痢や免疫力低下などがリスク要因である肛門周囲膿瘍によって生じます。便秘や下痢といった便通異常は、切れ痔・いぼ痔・痔ろうの発症・悪化・再発に大きく関与しています。痔の再発を繰り返すと肛門機能に大きなダメージが及び、大変な治療が必要になって、治療しても便失禁などQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく下げる症状が残る可能性が高くなってしまいます。
当院では便通異常を改善する治療を痔の治療と同時に行って、再発予防につなげています。便通異常の解消には生活習慣の改善も不可欠であり、再発を防ぐためには生活習慣改善を長く続けることが重要になってきます。患者様にとってできるだけストレスなく続けられるよう、当院では患者様のお話をじっくり伺った上でぐらい的なアドバイスや提案をさしあげています。